ぼんやりと回想
私の直属の上司である彼女の退職が、そう遠くない日である事を彼女の口から簡単に今の現状の説明と共に聞かされてから今日まで、怒涛のように時間が流れていった。
あの日、咳をするのと同時に苦悶の表情を隠せないでいる彼女に私はやや強い口調で言った。
「もう……半日ももたないと私は判断していますよ。この数字なら調整を入れられるので午後から帰って休んで下さいね。」
彼女は首を左右に振り、帰ろうとしない。
自分の今の状態を家族に話していないから帰るに帰れないというのだ。
直ぐに別室に簡易ベッドを用意させ、彼女を休ませる。
「…。どっちにしろ、早く良くなる事を最優先に考えてください。」
彼女にそう話す事しか私には出来なかった。